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受動喫煙について

受動喫煙について

執筆者:薬局長 柴田隆司

 

 受動喫煙という言葉は聞いたことがおありですか?

 たばこの煙は、喫煙者の口を通して吸い込まれるものを主流煙(喫煙者の口を通して吸い込まれるもの)と呼び、先端の点火部分から立ち上る煙を副流煙(先端の点火部分から立ち上る煙)と呼びます。喫煙者が紙巻たばこ1本を吸った際には、その30~40%が主流煙となるのに対し、50~60%は副流煙の発生源となります1)。さらに、空間の狭い中などでは副流煙の曝露量が多くなるなど、受動喫煙の健康影響は環境によって大きく変化します1)

 

 肺がんは、その組織型によって4種類のがん(扁平上皮がん、腺がん、小細胞がん、大細胞がん)に分類され、たばこを吸わない女性の肺がんには腺がんが多いことが報告されています。

 

多目的コホート研究(JPHC研究)の研究2)の対象女性でも、肺がんの8割以上は腺がんでした。そこで、腺がんに限って解析を行ったところ、受動喫煙のあるグループの肺腺がんリスクは、受動喫煙のないグループの約2倍高いことがわかりました(図1)。これは、統計学的にも偶然では起こりにくいという数字でした。更に、夫の喫煙本数別にみると、受動喫煙のないグループに比べ、日に20本未満で1.7倍、20本以上では2.2倍と、本数が多いグループほど肺腺がんリスクが高いことが示されました。

 長い年月受動喫煙にさらされた場合、肺がんだけでなく副鼻腔がんや慢性気管支炎、動脈硬化、心筋梗塞等、深刻な病気になるリスクが高くなることがわかっています。家の中や外等、喫煙場所が違った場合に、子どもにどの程度影響があるか調べた調査があります3)。子どもへの影響は、子どもの尿中に出てくるニコチン濃度で測定しています。

 

 右の図では、ドアを閉めて戸外で喫煙(所謂、ホタル族)しても幼児の尿中にニコチンが検出されています。よく換気扇の下で喫煙される場合もありますが、戸外で喫煙するよりは高い濃度が検出されています。

それは、喫煙者の髪や服にたばこの臭いとともに有害物質が付着しているからです。

 

 このような事実を認識されたら、これを契機に禁煙を考えられたらいかがでしょうか。

 

参考

1.https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/tobacco/yt-044.html

2.https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/309.html

3.https://www.kenpo.gr.jp/sgh/contents/03hoken/shiryou/question/06/04.html