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薬剤耐性とは

薬剤耐性Antimicrobial Resistance:AMRとはなんでしょう・・・AMRに寄せて

執筆者:薬局長 柴田隆司

 

 薬剤耐性菌の増加は世界中の問題となっており、その主たる原因として抗菌薬の多用が指摘され、弊害が現れています。具体的には、グラム陽性多剤耐性菌、多剤耐性グラム陰性菌による集団感染が報告されています。もし、これらの耐性菌に感染したら治療の手段が無い状態です。結果的に死亡する可能性が高くなります。多剤耐性菌の感染制御への対処として、医療従事者および環境を介した水平伝播の防止対策とともに抗菌薬の適正使用の重要性が指摘されています。一方、新規抗菌薬の開発は依然と比較し停滞しており、現存する抗菌薬の適正使用を推進することによって、薬剤耐性菌の出現を低下させることが求められています。

 環境消毒においては、高頻度接触箇所(ベッドの手すり、電灯のスイッチ、病室内テーブル、ベッドサイド洗面台、ドアノブ、手が触れる医療器具類)は日常的に適切な消毒薬を用いて清掃する。日々の適切な環境清掃が多剤耐性菌対策にもつながる、とされています。

 家畜に対しても抗菌薬が使用されていることを考えると、抗菌薬適正使用および多剤耐性菌問題に対しては、医療界のみならず農林畜水産分野との連携した対応が必要であると思われます。

 風邪症候群のほとんどはウイルスが原因であり、ウイルスに無効な抗菌薬処方は無駄であるだけでなく、耐性菌形成を促す、という事は新聞などに記事として掲載されています。

 上記で言われる抗菌薬適正使用は、耐性菌の出現防止治療効果の向上を目指しています。その手段として、「介入とフィードバック」、「使用制限」が有効とされています。病院においては、感染制御チーム(Infection Control Team;ICT)を組織して、医師や薬剤師を始め他職種が関与するチーム医療を実施し、介入と使用制限を基本とした抗菌剤の適正使用による有効性確保、耐性菌抑制を目指しています。診療・治療のガイドラインが専門学会から提言され、診療にあたる最前線の医師が患者さんの状況を判断しながら治療に当たられておられます。

 

 治療を受ける立場からは、まず、感染症にかからない工夫、すなわち、①手洗い、②咳エチケット、③ワクチン接種 が重要でしょう。そして、感染症にかかったら、処方された薬を医師の指示通り、きちんと飲み切ることです。